見学会
(社)日本機械学会関西支部

第629回見学会参加記録



開催日: 2008年7月22日(火)13:00~16:00
見学先: (株)きしろ 播磨工場
参加者: 37名(事務局2名含む)


 大正4年創業の(株)きしろは,大型鋳鍛鋼品の切削加工,大型溶接構造物の製作および組み立て,自走式2階建て駐車場の製作・設置,各種産業プラント用装置・機器類や各種クレーンの設計・製造を行っています.

 戦艦大和の主砲の砲身を削り出した大型旋盤が現役で稼働しているところが見られる機会であり,盛夏にもかかわらず多数のご参加をいただきました.最初に,播磨工場長の中島取締役から会社の概要,沿革などについて紹介があり,その後,超大型の旋盤やターニングなどの各種大型工作機械および大型船舶エンジンのクランク軸などの大型機械部品の機械加工を見学しました.

 全長263mの艦体だけでなく,口径46cm,長さ21mの主砲が世界最大であったことが戦艦大和の真髄です.この主砲を製造した大型旋盤は1938年,ドイツ・ワグナー社から旧日本海軍に導入されました.その後,1956年,神戸製鋼所に払い下げられた後,1996年,(株)きしろ 播磨工場に移設されました.導入以来70年経過した現在でも内部の軸受やギアなどを交換しただけで,外観は当時のままとのことでしばしの間,記念写真の撮影会となりました.なお,呉市海事歴史科学館(通称,大和ミュージアム)には戦艦大和に関する資料とともにこの大型旋盤の写真も展示されているとのことです.

 大型船用のクランク軸は長さ20m,重量300トンを超す巨大なものですが,百分の一ミリ単位の精度が要求されます.切削点は数百度の高温になり,まさに熱との闘いであり,「匠の世界」であることが理解できました.

 工場見学の後,高砂工場長(前播磨工場長)の藤田取締役を交えて,活発な質疑応答がありました.戦艦大和にゆかりのある最大かつ現役の工作機械として,終戦の日の前後には毎年多くの取材を受けるというエピソードも紹介されました.

 最後になりましたが,貴重な機械の見学と懇切な説明をしてくださいました藤田取締役,中島取締役をはじめ,(株)きしろの皆様に心から感謝申し上げます.


   日本機械学会関西支部 企画幹事
   松川公映(三菱電機(株))